「森川さん江」
監督・脚本 佐々木竜太郎
出演:佐々木竜太郎、塘内彩月(声)
制作年:2021
5分の映像コンテストの話を聞いた日、たまたま電車で多和田葉子の「遣灯使」を読んでいた。映像を作ろうという気になったのには、この「遣灯使」の存在が大きかった。
それは僕に、高校の時に書いた小説を思い起こさせた。困難が訪れた世界。大人は過去と比較し、変わり果てた現在を嘆く。だけれど、子供たちはそこに新しい形の美しさを作り上げ、希望を見出す。その話を作ったのは、東日本大震災で流された祖父母の家を初めて実際に見た夏だった。
高校の時の発想が、今の自分にとっても重要に思えたのは、今年が震災からちょうど10年で、例年以上に意識させられたとともに、新型コロナウイルスによる閉塞感が世界を覆っていたからだと思う。
高校の時と違い、映像にするからには、物質と対峙しなくてはならなかった。希望である美しさのイメージに繋がる、身近にある物質。考えていくうちに、図鑑というアイデアが出てきた。図鑑は、子供の頃に夢中になったものだった。特に恐竜の図鑑を読んで、想像を巡らすことに。
また、「8日で死んだ怪獣の12日の物語」のように、テレビ通話を用いて作られた映像、というのにも興味があり(というのもよく接するようになったから)、それに対して自分なりにその遊び方、逸脱の仕方を提案したつもりだ。