「2001年宇宙の旅」
監督・スタンリー・キューブリック 脚本・スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク
出演:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド ほか
公開年:2001
この映画を見る直前、金曜ロードショーで「ハン・ソロ」を見ていた。お金がかかってるな、さすがディズニーだなと感心したのだけれど、何か物足りない。戦場を描いているせいもあるがとにかく殺風景で、彩りに欠けた映像なのだ。もっと美しい宇宙が見たくなって、途中で見るのをやめてしまった。
「2001年宇宙の旅」。冒頭から衝撃を受けた。ひたすら音楽と共に写真を切り替えていくだけ。やっていることはパワーポイントのスライドショーでもできることだ。なのに、その映像体験は紛れもなく映画なのだ。宇宙映画って、こんなシンプルでもいいんだ、という大きな発見だった。
今まで見たキューブリック監督の作品は、どれも冒頭のシーンをはっきり記憶している。「時計仕掛けのオレンジ」の、顔からゆっくりズームアウトする長い導入。「シャイニング」の、ひたすら山道を走る車を上から撮っている映像。今回の写真スライドショーも含め、それらは全て長めのシーンでありながら、退屈さを感じさせない。だから強烈に記憶に残っているのだと思う。
「2001年宇宙の旅」は、最近だと人工知能を語る時に例示される。宇宙船に搭載された人工知能HALのくだりを。だから、人間と技術についての物語というイメージがなんとなくあるけれど、そういう凡庸な話ではない、ということは本作を通して見て分かったことだ。だから何が分かったかって言われても答えるのが難しいけれども。
ただ、話が難解だからこそ、何度オマージュや言及・解説があっても、その魅力を汲み尽くすことはできないのだろう。印象的な美しいシーンが多いので(特にモノリスが出てくるところ)、アンダーカバーのコレクションに採用されたりもしているけれど、それもまた一つの面。また違った切り取り方もできるし、作品の生かし方がある。本作はそうした無限の可能性を秘めた作品なのだと思う。